そろそろクリスマスだからか街は賑わってカップルは幸せそうに歩いている。去年は蛍を映画に誘ったことを思い出した。本当はそこで告白しようとしたが結局はできなかった……あのとき告白していたら、何かが変わったんじゃないかと思ったりしながら今日も蛍のリハビリ病院に足を運んだ。
「蛍、こんにちは一馬です。今日も会いにきたよ」
リハビリの先生から同じ挨拶を繰り返しているともしかしたら言葉が出てくるかも知れないと言われこの挨拶が定着してきた。
今日は俺たちが小さい頃2人で遊びに行った公園の話をした。
「蛍が転校してきて仲良くなれたころ恐竜公園に連れてったんだよな。そしたら蛍、怖いって言ってなかなか入れなかったよな。でも今思い出すとリアルな恐竜が5体もいるんだもん確かに怖いかもな。もう少し可愛い顔ならよかったのにさ」
俺は昔を思い出しながら笑いかけるが蛍は無表情だった。このまま蛍の言葉も聞けないのか……俺はなんだか泣きそうになりながらも我慢した。俺が最後に蛍から聞いた言葉は「ありがとう」だった。その言葉にどんな理由が込められたのかわからないけど。それでもありがとうって言ってくれたことが嬉しかった。絶対に忘れないようにしたい思い出だ。面会終了のタイマーが鳴って俺は蛍の手を握った。
「蛍、また明日来るから待っててね。じゃあおばさん、また明日来ます」
「一馬くん無理しないでいいからね。寒いから気をつけて帰ってね」
俺は蛍の頭を人撫でしてから病室を出ようと振り向こうとしたら……
!!!
「蛍?」
蛍は俺のコートの裾を握っていた。
「蛍?」
呼びかけると涙をポロポロと流している姿を見て俺は思わず蛍を抱きしめた。自惚れだと思われてもいい。でもきっと俺に帰ってほしくないという蛍からの意思表示だと思った。俺はおばさんの前だというのにしばらくの間、蛍を抱きしめながら蛍のぬくもりを感じていた。そっと体を離しても蛍はまだコートを握っていた。その手をそっとコートから離して両手で包み込んだ。
「蛍、ありがとう。俺に帰って欲しくなかったのか?でも今日は時間だから帰るけど必ず明日も絶対に来るから待っててね」
その顔は少し笑っているように見えた。おばさんは俺に見えないように後ろを向いていたが背中が微かに震えていた。俺はおばさんの背中に頭を下げて病室を後にした。蛍からのクリスマスプレゼントをもらったような気持ちで心が温かくなった。
俺が蛍に会いに行くようになって1ヶ月が過ぎた。
最近の蛍は大きな変化が見られた。それは……
「蛍、こんにちは一馬です。今日も会いにきたよ」
いつもと変わらない挨拶をすると
「……こ、ん、に、ち、は」
そう最近ようやく声を出せるようになったのだ。まだまだオウム返しのようなものだが声を出せるようになった。そして……最近は1人で歩けるようにもなった蛍の変化に奇跡が起きたとみんなが喜んで驚いた。ぎこちないけど笑顔も見られるようになったけど記憶の方は全く変化は見られないが……
それから季節は春になり俺は3年生に進級して蛍はあのまま退学になった。まだ学校に行くのは無理だろうと……仕方がないが。
そして……蛍のことがあってから行けずにいた部活を正式に辞めた。新しいクラスには蛍の存在を忘れているものさえいる。それでもいいと思ってる関わりが薄い人なんてそんなものだろう……俺は最近ようやく蛍のいない学校生活にも慣れてきたつもりだったけど、やっぱり俺の隣でいつも笑っていた蛍がいないのは寂しいと思う気持ちはなかなか薄れなかった。
暖かい陽の光を浴びながら手を繋いで蛍と散歩をすることも増えた。あの頃と同じように俺の左側には蛍がいてくれる。
「蛍、こんにちは一馬です。今日も会いにきたよ」
リハビリの先生から同じ挨拶を繰り返しているともしかしたら言葉が出てくるかも知れないと言われこの挨拶が定着してきた。
今日は俺たちが小さい頃2人で遊びに行った公園の話をした。
「蛍が転校してきて仲良くなれたころ恐竜公園に連れてったんだよな。そしたら蛍、怖いって言ってなかなか入れなかったよな。でも今思い出すとリアルな恐竜が5体もいるんだもん確かに怖いかもな。もう少し可愛い顔ならよかったのにさ」
俺は昔を思い出しながら笑いかけるが蛍は無表情だった。このまま蛍の言葉も聞けないのか……俺はなんだか泣きそうになりながらも我慢した。俺が最後に蛍から聞いた言葉は「ありがとう」だった。その言葉にどんな理由が込められたのかわからないけど。それでもありがとうって言ってくれたことが嬉しかった。絶対に忘れないようにしたい思い出だ。面会終了のタイマーが鳴って俺は蛍の手を握った。
「蛍、また明日来るから待っててね。じゃあおばさん、また明日来ます」
「一馬くん無理しないでいいからね。寒いから気をつけて帰ってね」
俺は蛍の頭を人撫でしてから病室を出ようと振り向こうとしたら……
!!!
「蛍?」
蛍は俺のコートの裾を握っていた。
「蛍?」
呼びかけると涙をポロポロと流している姿を見て俺は思わず蛍を抱きしめた。自惚れだと思われてもいい。でもきっと俺に帰ってほしくないという蛍からの意思表示だと思った。俺はおばさんの前だというのにしばらくの間、蛍を抱きしめながら蛍のぬくもりを感じていた。そっと体を離しても蛍はまだコートを握っていた。その手をそっとコートから離して両手で包み込んだ。
「蛍、ありがとう。俺に帰って欲しくなかったのか?でも今日は時間だから帰るけど必ず明日も絶対に来るから待っててね」
その顔は少し笑っているように見えた。おばさんは俺に見えないように後ろを向いていたが背中が微かに震えていた。俺はおばさんの背中に頭を下げて病室を後にした。蛍からのクリスマスプレゼントをもらったような気持ちで心が温かくなった。
俺が蛍に会いに行くようになって1ヶ月が過ぎた。
最近の蛍は大きな変化が見られた。それは……
「蛍、こんにちは一馬です。今日も会いにきたよ」
いつもと変わらない挨拶をすると
「……こ、ん、に、ち、は」
そう最近ようやく声を出せるようになったのだ。まだまだオウム返しのようなものだが声を出せるようになった。そして……最近は1人で歩けるようにもなった蛍の変化に奇跡が起きたとみんなが喜んで驚いた。ぎこちないけど笑顔も見られるようになったけど記憶の方は全く変化は見られないが……
それから季節は春になり俺は3年生に進級して蛍はあのまま退学になった。まだ学校に行くのは無理だろうと……仕方がないが。
そして……蛍のことがあってから行けずにいた部活を正式に辞めた。新しいクラスには蛍の存在を忘れているものさえいる。それでもいいと思ってる関わりが薄い人なんてそんなものだろう……俺は最近ようやく蛍のいない学校生活にも慣れてきたつもりだったけど、やっぱり俺の隣でいつも笑っていた蛍がいないのは寂しいと思う気持ちはなかなか薄れなかった。
暖かい陽の光を浴びながら手を繋いで蛍と散歩をすることも増えた。あの頃と同じように俺の左側には蛍がいてくれる。

