45歳。週末は逆シンデレラと。

パートナーといっしょにごはんを食べて、私はプリンを食べ、そのひとは味なしのミックスナッツをカリカリかじっていた。甘いものはそこそこ好きらしいが、自分が食べるより、私が食べているのを見るのが好きらしい。変なやつ。でも好き。
脚を蹴りあいながら晩ご飯の片づけをして、スマートフォンをちょっといじる。「あ、俳優のなんとか、結婚したらしい」「へー」みたいな会話をして、
それからそのひとは風呂を洗って湯を溜め、先に入った。その間に、私は明日の朝の分のお米を洗い、冷蔵庫に入れる。
そのひとが完全にオフモードでお風呂から出てきたら、私が入る。あ、こないだ私が買ったちょっと良いヘアパック、勝手に使ったな!!
ゆったりと湯に浸かっていると、1週間の疲れがすうっと抜けていく。いや、きみが来たからかな。
(きちんと床と壁と鏡も拭いてある。私の教育のたまものだなっ!!)

20代は勉強と仕事に追われ、30代前半で病気の父を介護し看取り、母に代わっていろいろな手続きをし、それからまた仕事をし、
たまに服を買ったり、ちょっと旅行へ行っている間に「行き遅れ」てしまった。
40代前半。将来はシェアハウスにでも住もうかな、と思う気持ちと、いやいや婚活しようぜ、って思う気持ちがせめぎ合い、なんとなくマッチングアプリに登録し、いろいろなひととデートを重ねた上で出会ったのが、今のパートナーだ。
おだやかでめったに怒ることはなく、趣味は読書と手芸。この「手芸」ってのにちょっと惹かれた。私はそう言うのやったことないし。
趣味を聞いて陰キャかと思いきや、学生時代はずっとスポーツをやっていたらしい。今でも、ちょっと息抜きにジムに行くので、身体は引き締まっている。
- 手芸ってねぇ、集中力が増すんだよねぇ。
甘い紅茶みたいなテノールでのんびりとそう言われたら、私も何か手芸をはじめたくなり、今では、週末にパートナーと手芸用品店をめぐったり、手芸の展覧会を見に行ったり、小さなものをちくちく、または、あみあみ作ったりしている。
人生って不思議だ。

「10数えてから上がってねー」と言うパートナーの言葉通り、上がる前にゆっくりと10数えた。濡れた髪のまま部屋に戻ったら、
パートナーがドライヤーをこたつの上に用意しておいてくれた。白湯もだ。本人は、何かちくちく作っている。
「新しいやつ?」
「うん」
「それ、生地何?」
「妹のリクルートスーツ見つけてさぁ。良い生地でしょ、これ?」

まるでご自慢の車や靴を見せるみたいに、きみは、グレーのスーツを切り取ったらしい真四角の生地を見せる。5センチかける5センチくらいだろうか。
「パッチワーク?」
「きみが望むならそうしようかな」
「それ、ときめくべき?」
「ふふ」

こうやっていつませも、きみとふざけながらキスしたり、抱き合ったりしたいなぁ。
きみが私に飽きるまで。