マリアンヌがやったと自信を持っているジャルダンとロザリーは、強気な態度を崩さない。

ロザリー、まだ言ってるわ……。
よほどアレンがダサく見えたのね……ってそうじゃなくて、実際二人の言っていることは正しいしね。
もちろん私がやっただなんて自白するつもりはないけれど。

マリアンヌがやった、いや、やってないで水掛け論となり、収拾がつかなくなった講堂。
全校朝礼はいまや混迷の様相を呈していた。

その結果――
なぜかマリアンヌの犯行が実現可能かを、皆で再現してみることに決まった。
悪役令嬢ものの小説をたくさん読んで予習をしていたマリアンヌでも、この展開は想定外である。

再現が始まった学園は、なかなかのカオス状態だった。

足が速いという王家の護衛騎士や、俊足自慢の学生が様々なルートで校内を走り回り、屋上ではガタイのいい何人もの教師や令息が、教科書に見立てた物体を湿地帯めがけて放り投げている。
悪口と階段落としの現場からマリアンヌが短時間に移動することが可能かどうか、また教科書を長距離投げられるかの検証の為だ。

まさかこんなことになるなんて……。
みんな案外楽しそうだけれど。

そういうマリアンヌ自身も楽しんでいた。
誰が何度試しても、マリアンヌの鉄壁なアリバイが崩せないからである。