生徒会長のアルターは、公爵家の嫡男で、現宰相の息子である。
マリアンヌの幼馴染みでもある彼は、学園始まって以来の秀才だと言われていた。

いつものようにアルターと軽口を叩き、クスクス笑いながら席に座ると、すぐに全員が揃って定例会が始まったーーのだが。
それはまだ最初の議題、文化祭について話している最中に起こった。
突然慌ただしい靴音と共に、生徒会室の扉が大きな音を立てて開かれたのだ。

「マリアンヌ、とうとうロザリーに手まで出すとは恐ろしいやつだ! 見ろ、ロザリーがこんなに震えているではないか!」
「えぐっ、わ、わたし、マリアンヌ様が恐ろしいですぅ~」

定例会中の生徒会室へ、ジャルダンとマリアンヌが乱入してきたのである。

やっぱり来たわね。
あまり心配はしていなかったけれど、睡眠薬の後遺症がないみたいで安心したわ。
それにしても、恐ろしいのはあんなに雑に扱われてもピンピンしている、ロザリーの身体じゃないかしら。

目が覚めたロザリーが、すぐにジャルダンに泣きついたことは想像に難くない。
なにしろ彼は目と鼻の先の屋上に居たのだから。

「ジャルダン殿下、何があったのかは存じませんが、今我々は会議の最中なのでお引き取り願えませんか」

今までの二人の行いを知っているのか、アルターがすげなく追い返そうとしている。
さすがに王子相手に強気過ぎる気もするが、他の役員もそれを止める者はいなかった。

「なんだと!? ロザリーは階段から突き落とされたんだぞ? 私が屋上で彼女を待っている間になんて卑怯な。犯人はそこにいるマリアンヌだ!」
「そうですぅ。私に愛しい男との逢引を邪魔されたマリアンヌ様は、凄い形相で私を階段の上から下まで突き落としたんですぅ」