嫌がらせの追加ができたことは喜ばしいが、二人が面倒なことには変わりなかった。

適当にあしらっていると、またまた侯爵令息のベリックが助け舟を出してくれた。
彼はマリアンヌのクラスメイトなので、目の前で繰り広げられる理不尽なやり取りを、不憫に思ってくれたのかもしれない。

「お二人ともいい加減になさったらどうですか。マリアンヌ嬢は差別ではなく、区別をしているだけです。貴族として当然のことですよ。一度冷静になられては？」
「なんだと？」
「まさか貴族社会が階級という秩序の上に成り立っているということをお忘れではありませんよね？」

ジャルダンはベリックの言葉に憤慨した様子だったが、やがてまだ文句を言い足りない様子のロザリーを連れて退散していった。
良くも悪くも貴族は階級で分けられ、己の使命を全うしている。
王子自らが爵位を否定するような発言をしたまずさに、ようやく思い至ったようである。

「ベリック様、今回も巻き込んでしまって申し訳ありません」
「いえ、マリアンヌ嬢こそ災難でしたね。僕があなたの役に立てたのなら光栄ですが」

以前はおっとりしていると印象のベリックだったが、そこはやはり侯爵令息。
王子相手にもひるまず、言うべきことを言えるだなんて素晴らしい。
「頼もしかったですよ」とマリアンヌが笑いかけると、照れたように顔を赤らめたベリックを、クラスメイトたちが微笑ましそうに眺めていた。