これまでロザリーへの嫌がらせを積極的に行ってきたつもりのマリアンヌだが、お茶会を嫌がらせの口実にしようとは考えてもいなかった。
むしろそんな手もあったのかと手を打ちたい気分だが、やっていない虐めを認めることなどできない。

とりあえずマリアンヌは、週末に行うお茶会の招待基準について説明を試みることにした。
――そんなことは、普通の貴族なら知っていて当然なのだが。

「申し訳ないのですが、今回のお茶会は伯爵家以上の家格の令嬢に声をかけておりまして」
「ほらな! 私はそれが身分による差別だって言っているんだ。男爵令嬢だからと、招かれないロザリーが可哀想じゃないか」
「私、参加したいのにひどいですぅ。そうやって身分の低い私を馬鹿にして虐めているんですよね」

は?
馬鹿になんてしていないし、虐めてもいないわよね?

「そんなつもりはございませんが」
「無意識に虐めているということか。なんてひどい女だ……」
「そうやっていつもいつも男爵令嬢の私を虐めて……」

さきほどからまったく埒が明かない。
出席できる夜会や茶会が階級で区切られていることなど貴族社会では当たり前のことで、強引に参加をしたって恥をかくのは自分なのである。
どうしてわからないのだろうか。

そんなにうちのお茶会に参加したいのかしら?
お父様が怒り狂いそうだけど。
でも待って、これって予定外に第三の嫌がらせが出来たってことじゃない?
通常のお茶会ですら勝手にいちゃもんつけて、虐めだと騒ぎ立ててくれるなんて、悪役令嬢としては得した気分ね。

マリアンヌは予期せぬうちに『仲間外れ』という嫌がらせを追加していたらしい。