切れ長の瞳を持ち、聡明そうな顔付きをしているレックスは、同じ整った顔でもジャルダンとは全く似ていない。
二人の母親が違うことを思い知らされるようだ。

レックス様が出てくるとは予想外だったわね。
ここの兄弟は仲が悪いけれど、レックス様は昔から私に懐いてくれているから大丈夫……よね？
でも、結局は私は不仲な兄の婚約者という立場だし……。

不安が顔に出てしまっていたのか、マリアンヌを気遣う様にレックスが優しい声で話しかけてきた。

「邪魔をしてごめんね、義姉上(あねうえ)。あなたを傷付ける暴言を、とても聞いていられなくて。良かったらこの場は僕に任せてもらっても？」
「レックス様、せっかくの昼食時間を邪魔してしまい申し訳ございません。居合わせた皆様までを巻き込んでしまって……」

マリアンヌがレックス、友人、周囲の学生に頭を下げると、すかさずレックスが側にやってきて労わるように彼女の肩に手を置いた。

「そんな他人行儀なことを言わないで欲しいな。誰も義姉上(あねうえ)を悪く思ってなどいないよ。悪いのはもちろん……ねえ？」

レックスがロザリーにちらっと視線を向け、意味深に周囲に問いかけると、思いきり首を縦に振る学生たち。
マリアンヌは自分の想定より大事に発展してしまったことに内心慌てていた。