そのままつかつかと、マリアンヌが食事をするテーブルまで足早に近寄ってきたロザリー。
怒りが収まらないのか、彼女はキンキンとした声でマリアンヌを責め始めたが、その手には泥が付いた教科書らしきものがしっかりと握られている。

やったわ!
誰かが見つけてロザリーに届けてくれたのね。
ありがとう、三年生の見知らぬ方!

嫌がらせが上手くいったことを悟ったマリアンヌは、内心ほくそ笑むのを止められない。

「突然やって来たと思ったら、さきほどから何を仰っているのかしら? どうしてマリアンヌ様があなたの教科書を捨てなければならないの?」
「そんなの、私の存在が気に入らないからに決まってるじゃない。ジャル様の寵愛を独り占めする私が妬ましくて許せないのよ」
「まあ! ぬけぬけとなんてことを!」

友人らがマリアンヌをかばう様にロザリーとやりあっている。
前回、マリアンヌと一緒に悪口を言っていた仲間だと言いふらされたことで、彼女たちも頭に来ているのかもしれない。

食堂中の視線が向けられ、ピリピリとした空気が流れる中、良く通る凛とした声が響いた。

「ちょっといいかな」
「レックス殿下!」

その声の主はジャルダンの弟、第二王子のレックスだった。