「ただいま戻りました」
「おかえりなさいませ、お嬢様。首尾の方はいかがでしたか?」

屋敷では執事見習いのアレンが、ソワソワしながら彼女の帰りを待っていた。
こんな彼は珍しかったが、自室に着いたマリアンヌは今日の騒動を興奮気味に語って聞かせる。

「……で、ロザリーったら私がしょっちゅう虐めているみたいなイメージを植え付けようとしていて。やるわね、あの子。でも先に実習室へ行ってもらったお友達にも正真正銘のアリバイがあるわけだから、私たちはそろって濡れ衣を着せられた被害者だってみんなは思ってくれたみたい」
「それはそれは、さすがお嬢様ですね。……ふーん、ベリックとやらは要注意人物だな」
「アレン? 何か言った?」
「いえいえ。確か次はロザリー様の私物を捨てておくのでしたよね。壊すのは可哀想だからと」
「そうそう。腕が鳴るわー」

右腕をブンブン振り回すマリアンヌを、アレンが意味ありげに見つめていた。