一方、盛り上がるジャルダンとロザリーとは反対に、集まった学生たちの二人を見る目は冷ややかだった。

「恥知らずも頭が悪いのも本当のことでは?」
「こんな場所で殿下を愛称で呼ぶなんて」
「事実を指摘されて腹を立てているようにしか見えないな」

その反応は極めて冷静で、二人に同情するものなどいないようだ。

あら?
これだったら私が直接ロザリーに悪口を言っても同じだったかもしれないわね。
……いやいや、私は冤罪をかけられなきゃいけないのだったわ。
グレーっぽく見せて、最後に潔白を証明する必要があるのよ!

マリアンヌは申し訳なさそうに反論を始めた。

「わたくし、ロザリー様にひどいことなど言っておりませんが」
「何をしらじらしい。お前は少し前に、この教室の中で取り巻き共とロザリーの悪口を言っていたではないか!」
「そうですぅ。マリアンヌ様はそうやっていつも私のことを虐めてばかりで……」
「何!? マリアンヌに辛く当たられているとは聞いていたが、いつもあのような言葉を? 許さないぞ、マリアンヌ!」

マリアンヌはさっき初めて悪口を言ったはずなのに、日常的に虐めていたことにされてしまった。

恐るべし、ロザリー。
これは相手にとって不足はないわね。

マリアンヌは悪役令嬢としてのやりがいを感じ始めていた。

「お待ちください」

その時、ベリックが真剣な表情で間に入った。