◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「睡眠薬……?」
想像していなかった言葉に俺は驚く。テーブルの上の薬に書かれた薬品名は、ちっとも聞き覚えがなかった。
「なんで睡眠薬なんて……」
口をついででた言葉に彼女は無気力そうに返す。俺はその言葉が失言であったことにすぐに気がついた。
「……『なんで』?」
彼女の薄暗い目に俺の姿が映るが、俺を捉えてはいないようだった。それは今まで俺が見たことのない目で、彼女は絶望の底しか見えていない、そう感じた。
「私はただ、死ぬのを待っているだけ。家族と約束しちゃったの、自殺しないって。だから死のうにも死ねないの」
頑張って笑いかけようとしたのだろうか、口の端がひくっと動こうとした。だけどもうそんな体力も残ってないのか、彼女の口元が弧を描くことはなかった。
「……わたしも早くあっちに行きたい。人生100年なんて長すぎるから、眠って早送りできないかって思ったの」
できなかったけど、と彼女は付け加える。虚ろに天井を眺める彼女の姿はなんだか物悲しくて、俺はなんと声をかければいいか分からなかった。
「睡眠薬……?」
想像していなかった言葉に俺は驚く。テーブルの上の薬に書かれた薬品名は、ちっとも聞き覚えがなかった。
「なんで睡眠薬なんて……」
口をついででた言葉に彼女は無気力そうに返す。俺はその言葉が失言であったことにすぐに気がついた。
「……『なんで』?」
彼女の薄暗い目に俺の姿が映るが、俺を捉えてはいないようだった。それは今まで俺が見たことのない目で、彼女は絶望の底しか見えていない、そう感じた。
「私はただ、死ぬのを待っているだけ。家族と約束しちゃったの、自殺しないって。だから死のうにも死ねないの」
頑張って笑いかけようとしたのだろうか、口の端がひくっと動こうとした。だけどもうそんな体力も残ってないのか、彼女の口元が弧を描くことはなかった。
「……わたしも早くあっちに行きたい。人生100年なんて長すぎるから、眠って早送りできないかって思ったの」
できなかったけど、と彼女は付け加える。虚ろに天井を眺める彼女の姿はなんだか物悲しくて、俺はなんと声をかければいいか分からなかった。

