愛を知って涙に幸あれ。


お兄ちゃんが13歳、わたしが11歳の時、両親が離婚し、わたしたちは母親に引き取られた。

そんな母はわたしが中学生になる頃、同窓会で再会した同級生の男性と付き合うようになり、妊娠をきっかけに再婚したのだ。

それからは、お兄ちゃんとわたしは、まるで邪魔者扱いで家族として見てもらえず、自分の家のはずなのに自分の家じゃないみたいで、居心地が悪かった。

でも、それでもお兄ちゃんが居てくれたから、わたしは乗り越えられた。

そして、お兄ちゃんは高校を卒業すると進学はせずに就職をし、それと共にわたしを連れて実家を出た。

引っ越し先は、お世辞にも綺麗とは言えないワンルームのボロアパートだったが、わたしはあの家から出られたことが嬉しかった。

「これからは、俺が優莉のことを守るから。お前が嫁に行くまで一緒に居てやるよ。」
「そんなこと言って、お兄ちゃん、わたしがお嫁に行くの邪魔しないでよ〜?」
「しねーよ!優莉が幸せになってくれることが、兄ちゃんの一番の幸せなんだから!」

そう言って微笑んだお兄ちゃんの顔を今でも覚えている。

それからお兄ちゃんは、まだ高校生のわたしを抱えて必死に働いてくれた。

わたしもお兄ちゃんの役に立ちたくて、バイトをしようかと思ったが、「優莉はそんな心配しなくていいから、勉強に専念しろ!」と反対された。

そして、わたしがやっと高校を卒業し、就職先が決まった時、お兄ちゃんは自分のことのように喜んでくれた。

中小企業の事務員だったけど、これでお兄ちゃんに迷惑かけないで済む!

そう思い、わたしも必死に働き、二人で貯金をして今のマンションに引っ越すことが出来たのだ。