愛を知って涙に幸あれ。


「それ、優弦が好きだったよな。」

わたしがツナマヨのおにぎりを手に取るのを見て幹ちゃんは言った。

「うん。必ずコンビニのおにぎり買う時はツナマヨだった。」

わたしはそう言うと、おにぎりを包むフィルムを剥がし、ツナマヨのおにぎりを一口噛った。

「幹ちゃん、、、ごめんね。心配かけて。幹ちゃんには幹ちゃんの生活があるんだから、毎日来てくれなくても大丈夫だよ?」
「俺は別に無理に来てるわけじゃない。来たくて来てるんだ。それに、、、優弦との約束もあるし。」
「お兄ちゃんとの、約束?」

わたしがそう訊くと、幹ちゃんは俯いて何かを思い出しているように切ない表情を浮かべた。

「優弦がさ、会社で倒れた時、付き添いで救急車に乗ったの、俺なんだ。それでその時、、、喋るのも苦しいだろうに、俺に向かってさ、、、"優莉を頼む。あいつは寂しがりやだから、一人にさせられない。これは幹太にしか頼めない。"って、、、」

幹ちゃんの言葉を聞き、一気に涙が溢れてきた。

お兄ちゃんが亡くなってから、毎日泣きっぱなしなのに、、、
涙って枯れることがないんだって、この時に初めて実感した。

「お兄ちゃん、、、あの日の朝、体調悪そうだったの。でも、このくらい平気だからって仕事に出掛けて行った、、、。あの時、わたしが、、、病院に行ったら?って言ってれば、お兄ちゃんは、、、わたしのせいだ、、、」
「優莉、自分を責めるな。優莉のせいじゃない。病院の先生、言ってただろ。細菌性髄膜炎は、死亡率が高くて、もし助かったとしても後遺症が残るって。」
「でも、、、それでも、お兄ちゃんに生きてて欲しかった、、、。たった一人の家族だったんだよ?」

そう、お兄ちゃんはわたしにとって、たった一人の家族。
世界で一番大好きなお兄ちゃんだった。