そのあとのことは、あまりよく覚えていない。
覚えていることは、病院の先生からお兄ちゃんの死因は"細菌性髄膜炎"だと説明を受けたこと。
それから、葬儀にもう母親だとは思っていない母が義父と、その間に生まれた子を連れ一応参列していたが、涙の一つも流していなかったこと。
お兄ちゃんにお線香をあげに来てくれた参列者が予想よりも多く、お兄ちゃんは色んな人に慕われていたんだなぁ、と初めて知ったことくらいだ。
気付けば、お兄ちゃんはわたしが抱っこ出来るくらいの大きさになり、自宅の小さな祭壇の上に置いた遺影の中で微笑んでいた。
「優莉、ずっとそんなとこで座ってないで、何か食べた方がいい。ここ数日、まともに食べてないだろ。」
祭壇の前にぼんやりしながら座り続けるわたしに、幹ちゃんは言う。
幹ちゃんは憔悴しきっているわたしを心配して、ずっと付き添ってくれているのだ。
「食欲がなくて、、、」
「うん、分かるよ。実は、俺もだし。」
そう言いながら、幹ちゃんは食卓テーブルの椅子に座ると、さっき買ってきたコンビニのおにぎりを持ってわたしに見せ、「一口だけでもいいから。なっ?」と言った。
わたしは渋々立ち上がると、幹ちゃんと向かい合わせになるように食卓テーブルの椅子に座った。
そして、数個あるおにぎりの中から、お兄ちゃんが好きだったツナマヨのおにぎりを手に取った。



