あれから3年……

目の前には海斗がいるのだ。

「夏輝……海に行こうか」今にも消えてしないそうな小さな声でそう囁いた海斗に思い切りしがみつくと「行きたい」と静かに答えた。海斗の手があたしの頭の撫でていく……大きな手であたしの頭を撫でる海斗の手はとても温かくてその体温が全身に巡っていく。

「もう居なくならないで……」

そのあたしの言葉に海斗は思い切りあたしを抱きしめた。それは今までにないくらい強くて、苦しいほどだった。

3年越しに約束を果たしにきてくれた海斗。

「あの時はごめん」そう言い放った声は、少しだけ震えているように思えたが、あたしは強く海斗にしがみついた。そして恥ずかしそうに手を取り合うと、あたし達はあの日果たせなかった約束の海へと向かったんだ。

そして3年越しに約束を果たしにきた海斗はその日以来、再びあたしの前から消えた。

今度は、どんなに願ってももう二度と逢えないところまで行ってしまったんだ。

~7月20日~

「海斗?なにしてる?今年も逢いに来たよ~」

あの日、海斗と腰を下ろしていた階段にあの日と同じように座る。そして海斗が座っていた所にさっき花屋さんで買った向日葵を置いて……。

「夏輝ってなんか向日葵みたいだな、本当に夏女!」海ではしゃぐあたしを見ながら優しく微笑んで「だから向日葵が昔から大好きなんだ」そう力のないとても優しい声で囁いた海斗。

目を瞑るとその姿が鮮明に思い出される。

「あたしは海斗が好きだけどね」

転校した日、そのまま海斗は緊急入院で治療が始まっていた。生きるための治療、それでも病魔は彼の未来を奪おうと消えてはくれなかった。

海斗は、自分の最後が迫っているのを感じて、家族と医師の反対を押し切ってあの日あたしのクラスに転入生として入って来たんだ。

もちろんあの担任も共犯で。

限られた時間の中で、迎えに来てくれて約束を果たしてくれた。

だからあたしはこうして毎年ここに足を運ぶんだ。

海斗のいる海にーー