おいしいものシルヴプレ!!

「こにちわ!!
Bonjour !!」

そのひとは、
春のにおいをまとって、うちのコンビニへやってきた。

(うわっ、きれいなひと!!)

元気の良いあいさつにおどろいて、できたてのホットスナックを裏から持って出てきたわたしはビックリしてしまった。
ふわふわくるくるの金髪。キラキラの目はピスタチオの実のような色をしてくりくりだ。長身で細身。
(白い梅の花びらたくさんついてる……)

アイドルでも、こんなきれいなひと見たことない!!
(推し変しそう)

コンビニの大窓から入る、春のうすい金色の光を浴びて、輝くひと。
が、
何かを探すようにうろうろしている……
(お声がけするか)

「えぇと……
何かお探しですか?」
私がそう声をかけると、そのきれいなひとは、砂漠で井戸を見つけたような顔になり、すぐに絶望の表情になった。
(ん、んんっ、
大学で習ってる英語、なんとか発動しよう!!)
「め、May I help you?」

ちょっとどもってしまったけど、なんとか言えたぞ!!
と、

そのひとの顔が、ぱああああっと明るくなる。
あ、ど、どうしよ。英語力を期待されても……

「Water!!」

私は思った。
ヘレン・ケラーって、こんなに美人だったのか。
(そりゃ、サリバン先生も、勉強の教えがいがあっただろうな)

「Water, here」
私は、そのヘレンさん(仮名)を、壁際の飲み物のコーナーに連れていく。ガラスドアが並んでいて、
中のペットボトルや缶が整列しているのが見える。
「Oh non...」
あ、なんか困ってる。よし、
スマートフォン、発動!!
と、

ヘレンさんが、パンツのポケットからスマートフォンを出して、何かをしゃべった。
(声もきれい。音楽みたい。
そうだ。ヴァイオリンみたいな)

- 無糖の炭酸水をください。

とんでもなくキラキラ、さわやかな笑顔で、炭酸水を買って帰られました。
(「アリガトーアリガトーアリガトー!!」って、
でっかい声で感謝された。
一生分の感謝もらった気分)