太陽のような君と夏の恋

○朝・学校の教室
黒髪に戻した蒼依が教室に入ってくる。クラスメイトたちは「戻したのか」「……いいのか?」「黒髪の方が蒼依らしいよ」など、各々蒼依に声をかけている。
柚葉は蒼依を見て、ほっとした表情を浮かべる。

柚葉(金髪も悪くなかったけど、やっぱり黒髪の方が似合ってる……)

蒼依と目線があったことに気付き、柚葉は声に出さず唇だけを動かして蒼依に話しかける。

柚葉『黒髪の方が似合ってる』
蒼依『……知ってる』

目を泳がせたり赤くなったりせず、真っ直ぐに蒼依を見つめながら口パクで伝えてくる柚葉。蒼依は自身も口パクで返答しながら、表情が陰っていく。

蒼依(やっぱりな……俺の金髪は涼介とかいうやつの代わりでしかなかったってことだ……)

○放課後・学校の校門前
柚葉が校門から出ると、そこには涼介が立っていた。

涼介「久しぶり、柚葉」
柚葉「涼介くん……どうしたの?」
涼介「ちょっと話があって」
柚葉「……話?」
涼介「この前、プールで会ってから、柚葉のこと考えてて」
柚葉「……」
涼介「あの、さ。……よりを戻したいんだ」

突然の申し出に、柚葉は驚きすぎて声が出ない。

涼介「……柚葉?」

涼介に名前を呼ばれ、慌てて返答をする柚葉。

柚葉「……どうして急に? 私を振ったのは涼介くんだよね?」

柚葉(なんで今更そんなこと言うの?)

涼介「嫉妬してたんだ、俺。柚葉の幼馴染みに」
柚葉「……え?」
涼介「最初は仕方がないって思ってた。知り合って間もない人間と話すことなんて、共通の知り合いの美咲のことか、直近の出来事くらいだよなって。だけど……柚葉、気付いてた? どんな話にも必ず幼馴染みが出てきたんだ。頭じゃ分かってた。幼い頃から家族同然で、お互いの家を行き来してるって柚葉から聞いてたし。だけどそれを割り切れるかどうかは話が別だったんだよね。段々耐えられなくなって……、俺の歩く速度が速すぎること一つ、柚葉が言い出せなかったことに気付いた時、もう無理だって思った」
柚葉「そんな風に思ってたなんて……ごめん……」
涼介「いや。そもそも俺だって『幼馴染みの話はしないでほしい』って言い出せなかったから。……怖かったんだよ。柚葉に幼馴染みの話を禁止したら、会話すら途切れるんじゃないかって。……色々考えて別れを切り出すのが正解だと思ったんだ。でも別れた後の方が辛かった。他校だし、よく知らない元彼との関係なんて別れたら終わりでしょ? 俺は柚葉と会えないのが一番辛かった」