【マンガシナリオ】No way!!〜年下幼馴染みと年上上司に愛されちゃってます!?〜

〇 広告代理店の社内
彩陽は自席に座って、パソコン作業をしたり、会議室で打ち合わせをしたり、個人的に仕事の相談をしたり……と、淡々と仕事をこなす。

彩陽の声のみ
(理人のプロポーズを受けてから数日後が過ぎ去り、季節はしとしとと雨が降り続く梅雨を迎えようとしていた。
一時期比べると広まった噂はおさまりつつあると思いきや……いまだなごく一部でネモ葉もない噂が囁かれ続けてる……。
その噂の内容は悪意に満ちていて……私の人間性を否定し、侮辱するようなことばかりで、そういう噂に限って、よく私の耳に届いていた……。
気にしなければ良いのだろうけど……嫌でも耳に入ってきたら、やっぱり気になっちゃう……。
少しずつ精神的なダメージが食欲不振や不眠症となって、身体的にもダメージを負っていった……。
周りの人の好奇の目に口々に囁かれる噂……私は段々と仕事に行くのが嫌になっていったけど、自分が辛いから仕事に行かないわけにもいかなかった……。
ちょうど、大きな仕事を任されてて刻一刻と納期が迫っていたから……。
こんなこと相談したら(いったら)……
仕事よりもまずは自分のことでしょ!
って、言われそうだろうけど……私は自分に任された仕事をきちんと最後までやり抜きたかったから、無理やり平然を装って必死に仕事をこなしていったんだ)

ナレーション
(その彩陽の姿を同僚である恵と上司である友紀は心配でならなかった……。
どうしたら、噂がなくなるのか……。
これ以上、彩陽が苦しんだり、哀しむ姿を見たくない……と、思うが行動に移せない……。
噂を消す方法を見つけることが出来ず、
誰が彩陽のことを面白可笑しく、根も葉もない噂を口にし続けているのか、ハッキリと分からない以上……その者達を過剰に刺激しないように細心の中を払いながら、さり気ない声かけやフォローをして、ひっそりと彩陽のことを支え続けることしか出来ない己の無力さやもどかしさ、苛立ちを感じながら日々を過ごしていた……。
一方、理人といえば……)


◯電車の改札口
彩陽の自宅のある最寄り駅の改札口付近で理人は仕事帰りの彩陽を待っている。

理人「彩陽ちゃんっ!」

ナレーション
(マイペースに彩陽にアプローチし続けていた)

理人の声を耳にするなり、彩陽はげんなりする……。

彩陽「もーお迎えはいいって言ってるじゃない!」

彩陽の誕生日の日にプロポーズして以来、理人は彩陽の仕事帰りを駅の改札口付近で待つようになった。

理人「前に言ったよね? 1分、1秒でも長く彩陽ちゃんの傍にいたい……って。だから、そう出来る時はそうしたいんだよ!」
彩陽「あーはいはい」

何かと
『一緒にいたい……』
『傍にいたい……』
と、理人に言われ続けているので彩陽はさらにげんなりして、適当な返答を返し、理人のことを気にせずにスタスタと家路を目指す。
理人はさらさら気にしてない様子で、すぐさま彩陽の後を追って、隣を歩く。

理人「ねぇ〜」
彩陽「……」
理人「ねぇ〜彩陽ちゃん!」
彩陽「……」
理人「彩陽ちゃんってば〜」

理人が話しかけるも返事をすることもまして顔を見ることもなく、完全に無視して彩陽は家に向かって歩き続ける。
そんな彩陽の態度に理人は怒ることも落ち込むこともなく、マイペースに喋りかける。

理人「会社近くの最寄り駅で待ってちゃダメ?」

それまで無言だった彩陽が間髪入れずに叫ぶ。

彩陽「だめっ!!」
理人「えーなんで〜いいじゃんっ!」
彩陽「だめっ!! もう、ぜーったいにだめだからっ!!」
(もー勘弁してよ〜あんたがまた、会社近くで待たれたら、せっかくおさまってきた噂がまた大きく広まっちゃうじゃない! もう、好奇の目にさらされるのもいろいろコソコソと言われるのも……こりごりなんだからっ!!
ーーって、いってもまだ、一部では好奇の目を向けられたり、根も葉もない噂を囁かれ続けているけどね……)

彩陽の声のみ
(何故、こんなにも私が嫌がっているのにはちゃーんと、理由(わけ)があるんだ……。
時間(とき)は理人のプロポーズを受けて、翌日の夕方まで遡る……)


◯(回想)ー会社近くの最寄り駅改札口ー(夕方)
仕事を終えた人や学校帰りの学生がちらほらと駅へと集まり、帰宅ラッシュになりつつある時間帯にさしかかろうとしていた。

理人「彩陽ちゃんっ!」

理人の声を耳にして彩陽は目を見開いて驚く……

彩陽(……な、んで……)

彩陽の視線の先には制服姿の理人が満面の笑みを浮かべて、彩陽に向かって大きく手を振っていた。

理人は彩陽の姿を目に捉えると、足早に彩陽に駆け寄り、人目を気にせずに抱きしめる。

彩陽「ーーっ!?」
理人「仕事お疲れ様っ! 逢いたかったよ〜」

体全体で彩陽の存在を感じようと理人は彩陽を優しく包み込む……。

彩陽の声のみ
(理人のせいで注目の的になったことは言うまでもないよね……。
仕事帰りの理人が私を待って、人目も気にせずに抱きしめた件も相まってさらに私と理人の噂がものすごいスピードで広まってしまったんだよね……)


◯(回想)ー瀬野の家ー2階の彩陽の自室内
彩陽のことを抱きしめて離れようとしない理人をどうにか説得して、2人は帰宅する。
その際、理人は自分の家に帰る前に彩陽に『話があるから、来て!』と、言われて彩陽の自室を訪れる。

彩陽「もう、今後一切やめてよねっ!」
理人「えーなんで〜」
彩陽「なっなんでって……それは……」
理人「それは?」
彩陽「恥ずかしいからっ! 人前であんなっ……」

不意に彩陽の脳裏に仕事帰り、駅の改札口で理人に抱きしめられたことを思い出し、カーッと顔が真っ赤になる。

理人「……彩陽ちゃん……? だいじょっ……」

急に顔を赤らめる彩陽に理人が心配そうに声をかけるが、無視して言葉を重ねる。

彩陽「いい、分かった!?」
理人「やだ。分かんない」
彩陽「分かった!?」
理人「分かんない」

しばらくの間
『分かった!?』・『分かんない』の押し問答が続き、彩陽がこれではいつまで経っても埒が明かない……と、思い、仕方なく妥協する。

彩陽「じゃ、こうしない?」
理人「?」
彩陽「私の仕事帰り待ってていいわ!」
理人「ほんと!?」
彩陽「ただし……」

彩陽は凄みをきかせて、言葉を放つ。

彩陽「私の家の近くの駅ねっ!」
(どーだ!! これで文句あるまいっ!!)

悪代官のような口調で心の中で呟いた瞬間……

彩陽「ーーっ!?」
理人「うん、分かった!!」

満面の笑みを浮かべて、声を弾ませて返事をしながら彩陽を抱きしめた。


◯家並みが立ち並ぶ住宅街
肩を並べて2人は家へと向かって歩いている。

彩陽(ーーと、いう理由(わけ)……。お互いに納得のいくような……妥協点で納得したんだから、今更かえようたって、そうは問屋が卸さないわよっ!!)

彩陽のあまりの嫌がりように理人はそれ以上、自分の思いを強引に押し通すことはなく、謝罪を口にする。

理人「……ごめん」

しゅん……と、申し訳なさそうに理人は肩を落とす……。

彩陽「ーーっ!」
(あっ、言い方……キツすぎた……?)

滅多と目にしない理人の落ち込みように彩陽は心配になるが……。

理人「デートして!」
彩陽「!?」
理人「彩陽ちゃんの会社近くの駅で待てないのなら……そのかわりに次の休みの日にデートしてよ」
彩陽「はぁ!? なんで、そうなるのよっ! 意味分かんないっ!!」

そう彩陽は叫ぶと、スピードをあげて歩く。

理人「ちょっ……ちょっと、待ってよ! 彩陽ちゃんっ!!」

スピードをあげて歩く彩陽を慌てて、理人が追う。
ふっ……と、彩陽がふらつく。

彩陽「あっ……!」
(や、ばっ……!)

彩陽は咄嗟に、硬いアスファルトの地面に倒れた際に身体(からだ)に感じるであろう衝撃に備え目を瞑って身構えるも……思ってたほどの衝撃を身体(からだ)に感じることはなく、疑問を抱きながら、ゆっくりと目を開ける……。

理人「ーーっと、危なっ! 気をつけてよ、彩陽ちゃん」

彩陽は理人の胸の中にいた。
彩陽がふらついた瞬間に理人と抱きしめてくれたのだった。

ドキッ……! と、ときめくも……そのときめきいたことを理人に気づかれたくない彩陽は平然を装いながら喋る。

彩陽「そ、そんなこと言われなくても分かってるわよっ! 離して!」

すぐさま理人から離れようと彩陽は身動ぐも……やはり、簡単には抜け出せない……。
それどころか、さらに強い力で理人が愛おしそうに彩陽を抱きしめる。

彩陽「ちょっ……」
理人「ちゃんと食べてる?」
彩陽「ーーっ!」
理人「ちゃんと寝てる?」
彩陽「ちゃんと食べてるし、寝てるわよっ!」
理人「嘘」

理人が冷ややかに言葉を紡ぎ、彩陽の頬にそっと、触れる……。

理人「少し顔色悪いよ。それに……」

彩陽の頬に触れていた理人の指先が今度は彩陽の目元に触れる……。

理人「薄っすらとクマもあるし……」
彩陽「……っ……」
理人「……ムリしてる」

図星を突かれ、彩陽は絶句する……。

理人「仕方ないな〜」
彩陽「……?」

屈託ない笑顔を浮かべて、恥ずかしがることもなく言う。

理人「俺がご飯食べさせてあげる! 添い寝だって!!」
彩陽「ありえないっ!!」

彩陽の声が住宅街に響いたのは言うまでもない……。