キーンコーンカーンコーン

「はぁ」また進路調査書、白紙で出してしまった。

進路調査書とは、なりたい職業や行きたい大学、やりたい

ことなど将来のことについて自由に記入する書類だ。

私も高校2年生。そろそろ少しづつ決めなきゃなのに…

なんで悩んでいると、おっとりとした声が聞こえた。

私の親友の彩乃だ。

「やっほ〜奏音ちゃん」

「どうしたの?彩乃から私のところに来るなんて珍しいじゃん」

いつもは私の方が彩乃の席に寄って行ってるのに。

「やぁ…奏音ちゃん今日はどうだったかなぁって」

あぁ、進路の話か。1度彼女に、夢が決まらないことを相談

してから、毎回私のことを気にかけてくれているらしい。

優しい。とっても優しい。

「うーん、あんまり上手くいかなかったかも」

「そっか、でも大丈夫だよ。まだ時間はあるからゆっくり決めてこ?」

「…そうだね」

いつも彩乃はこうやって、優しく励ましてくれる。だけど

彩乃には申し訳ないが、少しずつ時間がなくなっていって

いることを自覚すると、そんな優しさに丁寧に対応する余

裕はなくなってしまった。