君の瞳の中で生きてみたくて


「今、丁度"ダークサイド"の最終巻を描いてる途中なので、それが終わってからつみき先生の"見えない星は涙のあとで"を担当してもらうことになります。つみき先生には大変申し訳ないんですが、下弦先生と打ち合わせをする時や作画の確認をする時は、つみき先生の方から下弦先生のご自宅に出向いていただくことになります。」
「あ、それは全然構わないです!」
「ちょっと気難しい方ですが、悪い方ではないので宜しくお願いしますね。」

そうこう話している内に、あるマンションの前に到着した。

「ここが下弦先生のご自宅があるマンションです。」

そう言う星野さんの言葉に、わたしは"えっ?"とちょっと拍子抜けをしてしまった。

あんなに売れてる漫画家さんだから、凄いマンションに住んでるのかと勝手に想像していたけれど、着いたそのマンションは5階建てのごく普通のマンションだったのだ。

わたしは車から降りると、星野さんに続き、マンションの中に入り、エレベーターで5階まで上がった。

そして、その一番奥の角部屋が月光先生のご自宅らしい。

星野さんは"505"と書かれている部屋のインターホンを鳴らした。

すると、少し待ってから「どうぞ。」と低い声が聞こえ、星野さんは「失礼します。」と言いながら玄関のドアを開けた。

ドアを開け、家の中を覗くと、家の中は真っ暗で"え、お化け屋敷?!"と思う程、光を感じられない部屋だった。

「え、、、真っ暗ですけど、、、。」

わたしがそう言うと、星野さんは慣れた感じで「いつもこんな感じなんで。足元、気を付けてくださいね。」と言った。

玄関のドアを閉めると尚更暗くなり、不安になったが、奥のリビングらしき場所には微かにパソコン画面のような明かりが見えた。