次の日、待ち合わせ時間の10時の5分前に待ち合わせ場所に到着すると、挙動不審な感じでスーツ姿で40代前半くらいの男性が近付いて来て、「もしかして、桐生つみき先生ですか?」と声を掛けられた。
先生?!
わたしは「あ、は、はい。桐生つみきです。」と言うと、その男性は胸ポケットから名刺を取り出し、わたしに差し出すと「BB出版の星野と申します。宜しくお願い致します。」と言い、わたしはその名刺を受け取りながら「こちらこそ、宜しくお願いします。」と言った。
名刺を見て、まだ夢のような感覚だったのが現実味を帯びてくる。
星野さんは「本来であれば、うちの会社で打ち合わせをして作画を担当する漫画家さんとの顔合わせをするところなんですが、つみき先生の作品の作画担当をする漫画家さんが家から出ない人でして、、、」と言い、苦笑いを浮かべた。
「家から、出ない人?」
「はい。あ、詳しく車の中で話ますので、こちらにどうぞ。」
そう言って、星野さんは近くに停めていた車に案内してくれた。
わたしは後部座席に乗ると、周りをキョロキョロしてしまった。
まだどこか疑っている自分がいる。
まさか、誘拐されないよね?!
って、こんな30手前の女なんて誘拐しないか。
「じゃあ、出発しますね。」
そう言い、星野さんは車を走らせ始めた。



