それからわたしは、早くこのホテル生活から抜け出す為に必死に仕事と向き合った。
一週間置きに新木さんが訪ねてきては、原稿の確認をして「つみき先生、気持ちにお変わりはないですか?」と訊いてくる。
その度にわたしは「ないです。」とハッキリ答えた。
「残念です。つみき先生さえ、僕を気に入ってくれたら、営業にも力が入るのになぁ〜。」
そう言って、いつも帰って行くのだ。
そんなある日、わたしは気分転換に近くのコンビニまで足を伸ばした。
そして、いつも飲んでいるミルクティーを探そうと飲み物が並ぶ、冷蔵コーナーに行った時、わたしはふとある物に目が止まった。
それは、千空くんがよく飲んでいたジャスミン茶だった。
わたしはそれを手に取ると、レジに持って行き、お会計をした。
ホテルの部屋に戻ると、わたしはそのジャスミン茶の蓋を開け、少し飲んでみた。
すると、鼻の奥がツンとして涙が溢れてきた。
千空くんは、いつもこれを飲んでたんだ。
何だか、千空くんをそばに感じれた気がした。
わたしは、もう一口ジャスミン茶を飲むと、自分に気合いを入れ、仕事を再開させた。
期限までに絶対終わらせて、帰るんだ。
千空くんのところに帰るんだ。



