君の瞳の中で生きてみたくて


次の日、15時くらいに新木さんが車で迎えに来てくれた。

その時間、千空くんはもちろん寝ていて、わたしはその寝姿を少し目に焼き付けてから荷物を持ち、家を出た。

あの幸せを感じていた日常がまるで夢だったかのように、わたしの心にはぽっかりと穴が空いていた。

「おはようございます!って、時間でもないですね。お疲れ様です!初めまして、桐生つみき先生の担当をさせていただきます!新木です!」

外でわたしを待ち、そう挨拶してくれた新木さんは、千空くんが言っていた通り確かに女性ウケが良さそうな"イケメン"だった。

「初めまして、桐生つみきです。宜しくお願いします。」
「つみき先生!思っていたよりお若いですね!」
「そうですか?もう29ですけど。」
「いや、29には見えないですよ!あ、こんなところで立ち話、失礼しました。どうぞ。」

そう言って、新木さんはわたしの荷物を持ってくれ、後部座席のドアを開けてくれた。

わたしは後部座席に乗り込むと、閉まるドアの窓の向こうに映る千空くんがいるはずの部屋のドアを見つめた。

新木さんは運転席に乗り込むと、「じゃあ、出発しますね!」と言い、車を出した。

わたしは寂しい気持ちを抱いたまま、千空くんとの生活をしばらく離れることになってしまった。

"好きにしたらいいよ。"

その言葉を思い出し、寂しくなった。

本当は"帰っておいで"と言って欲しかった、、、