君の瞳の中で生きてみたくて


千空くんから"好きだ"と真っ直ぐに気持ちを伝えられてから、わたしはどのタイミングで自分の気持ちを千空くんに伝えようか考えていた。

頭で考えることじゃないのかもしれないけど、伝えなきゃ!伝えなきゃ!と思えば思うほど、どうしたら良いのか分からなくなっていく自分がいた。

「はぁ、、、タイミング。タイミング。」

そんなことを呟きながらシャワーを浴び、お風呂から上がり、洗面所の鏡を前にドライヤーで髪を乾かしている時だった。

「なごみ?あがった?」

そう言って、洗面所にひょこっと顔を覗かせる千空くん。

わたしは一度ドライヤーを止めると、「うん。どうしたの?」と言った。

すると、千空くんは鏡越しに「、、、抱きしめてもいい?」と訊いてきた。

最初は、え?!と思ったが、ふと絵を描く見本に必要なのか!と思い、「あ、見本の為?いいよ。」と答えた。

千空くんは「うん。じゃあ、、、失礼します。」と言うと、わたしを後ろからそっと抱き締めた。

抱きしめ慣れてない感じが伝わってきて、恥ずかしくなってくる。

「手は、どこに、置けばいいんだろ。」
「え?んー、このへん?」

そんなことを言いながら、抱き締められているのだが、鏡に映る抱き締められている自分に照れてしまい、つい俯いてしまう。

すると、突然千空くんが「、、、嘘。」と呟いた。

「えっ?」
「見本ってのは、、、嘘。ただ、、、なごみを、抱き締めたかっただけ。」

そう言いながら、抱き締める腕に力を込める千空くん。

わたしを、抱き締めたかった、、、?

わたしは思った。
千空くんにわたしの気持ちを伝えるの、今じゃない?