「ありがとうございます、またお越しくださいませ。」
仲睦まじく、うちの商品を購入してお店を出ていく男女二人。
今の人たち、カップルかなぁ。
彼氏らしき人が凄く優しそうで、彼女さん幸せそうだったなぁ。
あのツガイのフクロウの置物、彼女さんが欲しい物だったんだろうなぁ。
いいなぁ、、、幸せそうで。
「あ、久世さん。そろそろあがってもいいよ!今日は突然ごめんね!午前中だけでも出勤してもらえて助かったよぉ!」
そう言うのは、この雑貨店"Sign"の店長である菱井さんだ。
「いえ、特に予定もなかったので、大丈夫ですよ。」
「でもせっかくの休みだったのにさ〜。代休で明日休みにしとくから!」
「ありがとうございます。それじゃあ、お先に失礼します。」
「はーい、お疲れ様!」
そして、わたしは帰り支度をして退勤する。
本当は今日、わたしは休みのはずだった。
しかし、急遽病欠が出て、午前中だけでも出勤して欲しいと菱井さんから連絡があり、出勤したという事だった。
わたしは特にいつも予定などない。
恋人も居なければ、友達も居ない。
だから、いつだってわたしは自由であって、でもその自由は不自由でもあった。



