外に出ると、ずっと缶詰め状態で仕事をしていた為、空気が美味しく感じた。
わたしが手を広げて深呼吸をすると、その隣を歩く千空くんは「いつもお疲れさん。」と言ってくれた。
「それは千空くんもでしょ?いつもお疲れ様です。」
そう言い合って、まだ完全な夜ではない空を見上げ、わたしは今ここに千空くんと二人で居ることが不思議だなぁと思った。
「まぁ、なごみ。」
「ん?」
「今もまだ、飛び降りたいとか、思うことある?」
思わぬ千空くんからの問いに固まるわたし。
わたしは少し考えたあと、「無い、と言ったら嘘になるかな。」と答えた。
「今でも、ふとあの時のことを思い出すことがある。何でわたしは、生きてるんだろうって。」
「、、、そっか。」
「高校卒業してからさ、就職先もなかなか決まらなくて、自分に合う仕事が全然見つからなくて、転々として、、、わたしは何をやってもダメだなぁって自暴自棄になって、、、。そんな時に無料で小説を書けるサイトを見つけて、書き始めてみたんだ。そしたら、最初は読者さんは一人とかだったけど、徐々に増えてきて、、、それが嬉しくて書き続けてた。自分が書いたものを読んでくれる人が世界のどこかにいるんだって思ったら、孤独感が薄れた気がしたんだぁ。」
わたしがそう言うと、千空くんは「それ、分かる気がする。」と言い、「俺もさ、最初は全然読者がつかなくて、でも一人でも読んでくれてる人がどこかに居るんだと思うと嬉しかった。それが今では、たくさんの人に手に取ってもらえるようになって、この空の下に住んでるどこかの誰かが、俺の漫画を読んでくれてるんだって思ったら、それが生きる力になって、今に至るんだ。」と言った。
「やっぱり、俺たち似てるよな。」
そう言う千空くんは空を見上げていて、わたしはそんな千空くんの横顔を見つめていた。



