君の瞳の中で生きてみたくて


そんなある日の朝。

わたしはリビングへ起きてくると、冷蔵庫から紅茶◯伝のミルクティーを出し、乾いた喉を潤していた。

すると、いきなり伊澄くんが「なごみ。」と呼び、普段は「久世。」と呼ばれているのに、下の名前で呼ばれ慣れていないわたしは照れながら伊澄くんの方を向いた。

伊澄くんは優しい表情でこちらを向いていて、「へぇ〜、照れるとそんな表情するんだな。」と言い、再び画面に向かい絵を描き始めた。

「ちょ、ちょっと伊澄くん!何でいきなり下の名前で!」

そう言いながら、わたしは伊澄くんに近付いて行ったのだが、伊澄くんがたった今描いている絵を見てハッとした。

伊澄くんは、丁度主人公の女の子が好きな男子との会話で照れている場面を描いていたのだ。

「俺さぁ、19から絵ばっか描いてきて恋愛なんてしてこなかったから、女の子の照れた表情とか分かんなくて。だから、久世をなごみって呼んでみた。」

女の子の照れた表情を描きながら伊澄くんは言った。

そっか、だから"なごみ"って、、、

「久世の照れた顔って意外と可愛いんだな。今日から、なごみって呼ぶわ。」
「えぇ?!てか、意外とって、、、」
「だから、なごみも俺のこと下の名前で呼んで?」
「そ、そんないきなり?!」
「いいから、呼んでみて?」

そう言う伊澄くんの押しに負け、わたしは照れながらも「ち、ちあ、き、くん、、、」と呼んでみた。

すると、千空くんはクスッと笑い「本当だ、下の名前で呼ばれると何かくすぐったいな。」と言い、照れているような表情を浮かべた。

千空くんも、こんな表情するんだ。
何か、、、新鮮だなぁ。