君の瞳の中で生きてみたくて


伊澄くんの生活は、とても自由だった。

絵を描き続けて、お腹が空いたら出前を頼んで食べて、また絵を描いて、好きな時にシャワーを浴び、眠くなったら寝る。

時間になんて縛られて無くて、朝昼晩関係なくその生活をしていた。

逆にわたしは自分の中でルーティンが決まっていて、それが崩れると混乱してしまうタイプだ。

朝起きたら、まずミルクティーを飲むところから始まり、伊澄くんが描いてプリントして置いてくれた作画のチェックをして、お昼には近くのコンビニに出掛けお昼ご飯を買ってきて食べて、それから次に出す新作の小説をリビングのテーブルの上にノートパソコンを置いて書いて、夕飯は出前、食べ終わったらシャワーを浴び、その後は布団に入る。

ちなみに、わたしは伊澄くんと同じベッドで寝るはめになってしまい、最初は「えー?!」と思ったが、ベッドのサイズがキングサイズの為、意外と隣で寝ていても気にならなかった。

というより、伊澄くんと同じ時間帯に寝ることがほとんど無い為、問題なく眠ることが出来ていた。

ただ、一つ。
この生活になってから、わたしのルーティンに加わったものがあった。

それは伊澄くんとの夜の散歩。

夜型の伊澄くんは、夜に散歩をするのが好きらしく、わたしもその散歩に付き合うようになった。

ただ空を見上げながら一緒に歩くだけの日もあれば、他愛もない話をしながら歩く日もある。

なぜか伊澄くんとは、会話がなくても一緒に居て違和感がなくて、話したい時に話せる、彼はわたしを不思議な気持ちにさせる人だった。