君の瞳の中で生きてみたくて


その後、出前で注文していたお弁当が届き、お弁当を食べ終えると、伊澄くんはタクシーを呼んでくれた。

「仕事辞めて、こっち来れる準備整ったら連絡ちょうだい。先に仕事進めとくから。」

伊澄くんにそう言われ、帰宅したわたしは早速次の日から、新しい生活に向けての準備が始まった。

次の日、出勤するとわたしは菱井さんに事情を説明して、すぐに退職しなくてはいけない旨を伝えた。

さすがに作家になるから、とは言えず、、、「母が倒れて、家業を手伝わなくてはいけなくて。」と家業なんてないのに嘘をついて退職させてもらえる事になった。

今までなかなか自分に合う仕事が見つからなくて、やっと続けられると思える職場がこのお店だった。

なのに、、、本当に申し訳ない。
菱井さん、ごめんなさい。

それから、わたしは急いで引っ越しの準備を進めた。

本当なら、伊澄くんの家の近くに自分で家を借りて、通いながら一緒に仕事をしたいところだが、毎日生活するので精一杯で貯金もそれほど無く、情けないが家を借りる余裕なんて無くて、渋々伊澄くんの家に居候させてもらうことになった。

「今日から、お世話になります。宜しくお願いします。」
「いらっしゃい。」

こうして、新人作家であるわたし、桐生つみきこと久世なごみと、売れっ子漫画家である月光下弦こと伊澄千空の共同生活が始まったのだった。