そばにいるって、君が忘れないように


深く深呼吸して、再び黒板と向き合う。
 
まだ、消さなければいけない範囲は多く残っている。

仕事しないと、とまだ震えている手で無理やり黒板消しを上下に動かす。


すると、私の黒板消しを持つ右手に大きな手が覆い被さった。


「なに無理してんだよ」
 

すぐそばから創先輩の声が聞こえる。


「創先輩……」

 
私は後ろを向かずそのまま黒板を見つめ、溢れ出そうな涙を必死に抑えた。


「貸せ、オレがやるから」
 

創先輩はそう言って黒板を消し始めた。


「手……震えてるけど、大丈夫か?」

「あ、手ですか? ははは、さっき机に思いっきり手を打っちゃって……へへ」
 

震えている手を後ろに隠した。

咄嗟に嘘をついてしまった。

 
創先輩はじっと私のことを見ている。

私は心の中が見透かされそうで彼から目を逸らした。