盗み見ていたのがバレたのだ。
きっと私も蹴られる羽目になる。
「大丈夫……」
聞き覚えのある声だった。
その声は私の心をやさしくやさしく包み込んだ。
私は後ろにいるのが誰なのか、すぐに分かった。
「優弥先輩……」
「見なくていい。目を閉じていて」
私は言われるがまま目を閉じた。
優弥先輩は私の肩に手をのせ、体をゆっくりと回転させた。
再び目を開くと、私の前には優しい顔をした彼がいた。
「大丈夫」
彼はもう一度、私に魔法をかけるように言った。
その呪文に私の涙はぴたっと止まり、心もだんだんと落ち着いていく。
私の状態を確認した優弥先輩は「よし帰ろう」と言って私の手を引いた。
いつもなら「泣いてやんの」とか「一人で帰ってこいよー」とか言いそうな彼が、私のことを慰めてくれている。
これがきっと、本当の優弥先輩なんだ。
