そばにいるって、君が忘れないように


まっすぐな瞳に、シャーペンを持つ手、そしてシャツを捲っているために見える腕──。


ダメだよ、こんなの。

彼女だったらどんなにか幸せだろうなんて考えてしまう。

いくら多感な時期で恋愛にしか興味はなくても、このビジュアルは反則すぎる。

きっと私の目はハートマークになっているに違いない。

 
亮先輩は視線を感じたのか、目線を教科書から私へと移した。
 
目が合った瞬間、私は何事もなかったかのように教科書に目線を落とし、そして穴が開くほどにそれを見つめた。


「なにしてるの?」と彼が訊いてきた。


「なぁんにもしてませんよ! どうぞどうぞ、解いてください。私のことなどはお気になさらずに」
 

必死に誤魔化そうとすればするほど恥ずかしくなっていって、それと比例して体も熱くなる。


「気になっちゃうんだよね……見られてると」と頬杖をつきながらこちらを見てくる。


さっきより顔との距離が近い。

彼の視線は私の目から徐々に下に流れて唇をとらえた。

そしてまた上に流れて再び私の目をとらえる。


創先輩がいる前でこんなことできないって。
 

もう少しで心臓が爆発寸前だったのもあったので彼の肩を押して「もう、集中してくださいよ」と誤魔化した。


亮先輩はふっと微笑んで再び解き始めた。

私は周りを見渡してみて見るとそこには創先輩の姿はなかった。

いつ部屋を出たのだろう。

亮先輩に気を取られていて全く気づかなかった。