そばにいるって、君が忘れないように



のどかは後ろを振り返ったあと「創先輩」と言って可愛らしくほほえんだ。


「次の授業は?」と訊くと、のどかは「数学です」と答えた。


「あ、創先輩って数学得意ですか? 分からないところがあって、できれば教えてほしいんですけど」

 
のどかは持っていた教科書を開いた。
 

オレは勉強が得意な方ではないが、解けることは解ける。

でも、説明は超が付くほど下手だと自分で自覚している。


「わりい、オレ教えるの下手なんだ。そういうのは亮に訊いたほうがいい」

「そうですよね……」
 

のどかは残念そうな表情で俯いた。

その表情を見たらさっきの胸の痛みがいっそう増したように感じた。

 
オレは……そんな悲しそうなのどかの顔は見たくないんだ。

できればずっと、そうずっと、のどかには笑顔でいて欲しい。

そのためにオレたちがいるようなもんだから……。


 

昼休みになり、今日ものどかは弁当を持っていつものベンチに来た。

 
のどかは昔から変わらずお利口さんだな。

心の中でそう思うと、オレは小さくほほえんだ。


のどかよりも早く来てベンチに座っていたオレの隣にのどかは座り、持ってきた弁当を食べ始めた。

 
彼女の横顔を見る。
 

なんだか眩しいような……直視できない感覚になるのは太陽の光のせいなのか。

 
のどかの手や仕草、風になびく髪にも目が移る。