彼はまた目尻に皺をつくって笑った。
「冗談冗談、冗談だって。ちょっといじめたくなっただけ」
「なんですか、それ」
私はへそを曲げたまま参考書を開き、先輩に背を向けて座わり直した。
ごめんと言って私の肩を揺らす亮先輩を無視していたら、私との座っている距離を詰められたような気がした。
すぐそばに気配を感じる。
このままでは逆に先輩のことを見れない。
振り向いたらすぐそばに顔があるかもしれない。
あの整いすぎている顔が……。
そう考えているうちに油断してしまっていた。
気付いたときには横から手が伸びてきていて、それは顔の向きを強引に変えさせたのだ。
横を向いてしまったときに目に飛び込んできたのは、やはり、整った顔だった。
「そんなにいじけないでよ。ごめんね。ね?」
またこの目だ。
素直で澄んだ瞳。
私はきっとこれに弱い。
「特別に、許す」
その言葉にやっと彼は安堵したようだった。
「じゃあお詫びに、これからいつでも勉強教えてあげるよ。分からないところがあったら何でも言ってね」
「じゃあ、私数学が苦手なんですけど……今度教えてもらいに行きます」
「いいよ。俺、何でも解けるから」
