そばにいるって、君が忘れないように



なんて反則なんだろうか。

その顔で囁きボイス。

もう、勉強いくらでも頑張れちゃう。


「イディオムとか、ややこしくて嫌いです」

「分かるわ」


笑った瞬間、彼の目尻に皺ができる。

もたれかかり、開放的に伸ばした亮先輩の腕が私へと近づくので心臓が急に激しくなった。

もう少しで亮先輩の手が私の肩に触れてしまうような気がする。

この微妙な距離が逆に心をざわつかせるのだ。

いっそのこと触れてほしいとさえ思ってしまう。


「亮先輩は、勉強、得意ですか?」と尋ねると、得意ではないけど出来るほうだと思う、と彼は答えた。


「俺、逆に勉強しか取り柄ないっていうかさ、俺から勉強を取っちゃったらなにもなくなっちゃうんだよね」


亮先輩はそう言って遠くを見て笑った。

その目はなぜか寂しそうだった。


「亮先輩の取り柄なんて勉強だけじゃないですよ」


私は何も考えずにしゃべっていた。


「何言ってるんですか。かっこいいし、優しいし、思いやりがあるし、かっこいいし……」

「かっこいい、二回言ったね」

「ん、もう……とにかく、取り柄ないとか言わないで下さい。本当に取り柄がない私なんて、それを聞いた後どうすればいいんですか」


私は頬を膨らませて言った。