そばにいるって、君が忘れないように

ホームルームが終わり、みんなはぞくぞく教室を出て部活動へと向かっていく。

私は美術室には向かわずに、いつもランチを食べているベンチへと足を運ぶ。

美術部は参加自由ということもあって気が楽だ。

今日は明日の英語のテストに向けてちょっとだけ勉強しようと思った。

教室で勉強するのも良かったが、ちょくちょく人が出入りするので気が引ける。

暗くなり始めたら教室でもいいかもしれないけれども。


「避けるという意味のavoid。huntは、推し進めるって意味ね。えーっと、うんうん、はいはい」


このくらいの単語量ならば一回見ただけで大丈夫な気がした。

対策としては、あと文法とイディオムをおさえれば安心だろう。


「はぁ……イディオムはきついな」


「idiom?」と流暢な英語の発音が私の耳に届いた。


「へ?」


顔を上げて前を見ると、そこには亮先輩が立っていた。


「なに、こんなところで勉強してるの?」
 

彼はゆらゆらと近寄ってきて私の隣に腰を下ろした。

そのまま私が持っていた参考書に視線を落とすと「英語の勉強ね」と納得したように言った。


「明日に単元テストがあるんですよ。今日、急に言われて」


うんうん、と頷いた彼は私の目を見て「頑張って」と囁くように言った。