そばにいるって、君が忘れないように


ん? と不思議そうに彼は私を見る。

心臓はまだ大きく動いていた。

私は恥ずかしがりながら腕を広げた。

ここには私たち二人しかいない。



「ぎゅ、して」
 


キングは辺りに誰もいないことを確認しながら私のところに来て、そして優しく包み込むように抱きしめた。

私の驚いた体は徐々に落ち着きを取り戻していく。

だが、鼓動はまだおさまらない。


「キングのここ、落ち着く」

「そうか」


キングは私の背中を優しくさすり上げた。



「俺たちがいる限り、のどかは安全だよ」

「うん」
 

私は彼の服から顔を離し、彼を見上げた。


「ありがとう。授業、頑張ってくるね」


ただキングは頷いた。




授業中だっていうのに、私の頭のなかはキングのことでいっぱいっぱいだ。

さっきは何も考えないでしてしまったのだけれども、私は彼氏でもない男の人になにを要求していたのだろう。


ぎゅーしてなんて、なぜ言えた? 

そしてキングはなぜ躊躇わない? 

優しすぎるでしょ。



キングの私を見つめる目を思い出す。



キングって運動神経いいんだなと感じる。

筋トレをしているというのは体つきを見れば容易に想像できた。


あんなに遠くにいたのに、一瞬で私のところまで来たってことでしょ……? 

やばすぎ。

それに、かっこよすぎ。


すると、不意に私は朝の占いのことを思い出した。



〈今日は非常に気をつけてください〉



非常に気をつけろというのは、もしやこのことではないかと思った。

全身の鳥肌がぞくぞくと立つ。


これでもしキングがいなかったら……。

考えるだけでも恐ろしい。

考えないでおこう。