そばにいるって、君が忘れないように



私は、病院行きを覚悟した。
 
今回は骨折どころじゃない。
 
救急車で運ばれる未来が走馬灯のように見えた。

私は目をぎゅっと瞑る。

からだ全体にも力を入れた。


 
だが──。
 
 

「あれ……?」

 
身体が、止まった。

いや、違うか。

いやいや、完全に止まっている。


私は、おそるおそる目を開けた。


キングは私の身体を抱きしめていた。
 
ううん、抱きしめているというよりは、落ちないように支えてくれているといった方がよいかもしれない。


「大丈夫か?」


心配した顔で彼が訊いてきた。

私のすぐ目の前にはキングの顔があって、澄んだ瞳で私の顔を覗き込んでいる。


ヤバいヤバい、キングがかっこよすぎる! 

もう、顔が近い! 

キスするんか? 

私たち、このままキスするんか?



必死に平然を装い、キングにお礼を言った。


「私、もうこのまま死ぬかと思って……」


心臓がドクドクと波打っている。

これは死ぬかと思って驚いているのか、それともキングにただドキドキしているのか。


「こっちも驚いたで……」


キングは、ほっとしたように笑った。


「単語帳なんか見ながら歩いちゃダメやろ。今回はたまたま俺がいたからよかったけど」

「はい……ごめんなさい」


生まれたての小鹿のようにガクガクと震えている私を、彼は下まで連れていってくれた。

そして、彼は手を振り「んじゃ」と言って去ろうとしたのを私は呼び止めた。
 

「キング!」