そばにいるって、君が忘れないように



「なに話してるん?」


声と共に私の視野の中にキングの顔がひょこりと入ってきた。


「いつものところに来て欲しいなってお願いしてたところ」と亮先輩がキングに言う。


「ふ~ん」

「僕たち、のどかに会うの楽しみなんだからね!」とキングの隣にいた純斗先輩が言った。


「それはお前だけじゃねーの?」とキングは純斗に向かって言った。

は? という顔をした純斗先輩はキングをおもいっきり叩いた。


「いっ……てぇーよ」


私は我慢できずに、クスッと笑ってしまった。


「キングも楽しみにしてるくせにぃ!」と純斗先輩が叫んだ。


 キングは大きな目をぱちくりするだけでなにも言わない。


「ほらぁ、否定しないじゃあん!」と純斗先輩がキングを覗き込む。


「の、のどかはやっとギブスがとれたんやから、あ、安静にな!」とキングが私に言うと、純斗先輩は「話そらしたな」とボソッと呟いた。


私はこらえきれずに声に出して笑ってしまった。


「そうだよ。もう、二度と骨折しないように」と亮先輩が真剣な顔をして言うので、私はピタリと笑うのを止めた。


「はい……分かりました」

 

私はその夜、今日の出来事を思い返しながらその喜びを噛み締めていた。


 ──俺らはもっとのどかと仲良くしたいって思ってる。


その言葉を何度も頭のなかでリピートする。


「きゃあああああ!」

 
恥ずかしい。
恥ずかしい。
恥ずかしい。

でも、嬉しい。

なに、あの亮先輩の潤んだ瞳!  

あんなこと言われたら……好きになっちゃうって!

それに純斗先輩も、たぶんキングも、同じように思ってくれてるってことでしょ。

もう……やばいってば。



私は足をバタバタと動かして、からだの中に充満している幸福を散りばめさせた。