「はい、国語の教科書」
横を見ると、武が国語の教科書を差し出しながら立っていた。
「え、なに」
「だから、国語の教科書忘れたんだろ? 貸してやるよ」
「う、うん。ありがとう……」
素直にお礼を言って、私は教科書を受け取った。
え、優しい。
どうしたの武。
優しいじゃん。
「いやあ、この前ノート貸してって頼んだときに他をあたってって断ったやつ、誰だったけなあ」
は、コイツ嫌味を言ってるよね……?
「やっぱり結構です。教科書なんかなくたって平気ですから」
私はカチンときた。
ムッとしながら教科書を武に押し付ける。
「うそうそ、冗談だって。ちょっとだけいじめただけだから」と言って武は笑った。
冗談?
いじめただけ?
私は中学生のときの記憶を思い出してしまった。
やっぱり武も私のことを──。
