そばにいるって、君が忘れないように


レモン色の爽やかな光に染め上げられる朝、人々は忙しなく動き出す。


朝食を作る人。 
自転車を漕ぐ人。
カーテンを開ける人。
時計を見て慌て出す人。


私は今、春の香りに髪をなびかせながら、桜の舞う並木道を歩いていた。


春──。


寒さが緩み、草花たちのつぼみが開き始め、土の中の虫たちは動き出す。

桜が散ると木々たちは緑の濃い葉を風に揺らす。

どんどん暖かくなってくると、その存在はパタリと消える。


春は、出会いの季節でもあり、別れの季節でもある。

全てが真新しくなった季節でもある。



私こと、佐々木のどかは高校生になった。


私は人見知りで、なかなか自分から人に話しかけることができない。

だから相手から話しかけてくれるととても良いんだけどなぁ、といつも思う。

でも、それは自分勝手だな、とも思う。

自分が変わらなくてはいけないとは思うのだけれど、

それがなかなか克服できないから毎回悩みに悩んでしまう。