そばにいるって、君が忘れないように


馴れ馴れしい。


私が嫌な顔をすると、武は、お願い、とでも言うかのように顔の前で手を合わせた。


「他をあたって」

私は少し強い口調で言って、教室を出ようとした。


「何でだよ」


武は、私の腕を掴んだ。


「なに、やめてよ」


私はその手を振り払った。


「お前しか知ってる女子いねぇんだよ」

「別に男子に借りればいいじゃん」

「男は信用にならない」

「はあ」


そんなこと言われても……。

私は早く教室から出たいのに。

正直言うと、武にノート貸したい女子なんてそこら辺にうじゃうじゃいると思うんだけど。

気持ち悪いくらい、うじゃうじゃとね。

武はバカで鈍感だからそんなこと気づいていないと思うけど。


「武くん、どうしたの?」と、クラスの女子の一人が話しかけてきた。

「あ、えー……」


武は頭に手をまわして焦っている。


「んじゃ」


私はその隙を見計らってその場を離れた。