私は扉を開けてマキのいる屋上へと足を踏み入れた。
「ま、マキさん……用事って……」
「あ、本当に来たのね」
フェンスの近くにいたマキは笑った。
「あのね。私、好きな人がいるから、その人に近づかないでくれる?」
好きな人……。
そんなこと言われても、中江マキの好きな人なんて知らないし、絶対近づかないなんて不可能だと思うんだけど……。
あ、でも人見知りの私には可能かも。
もう、クラス内で私は……省かれ者だから。
「その……好きな人って誰ですか?」と私は相手の顔の様子を伺いながら訊いてみた。
「知らないの? 学年のみんなが知ってるくらい有名なんだけどなあ。あ、そっかぁ! のどかちゃんは今、話す相手いないから情報得られないんだあ!」と納得したように彼女は笑った。
話す相手いないから、か……。
やっぱり中江マキが全部言いふらしたんだ。私のこと……。
「し、知りません……」
「そう? じゃあ、教えてあげる。……武よ」
武?
ああ、あの武か。
