〇都内・高層ビルの八階にあるカフェの個室(夕方)
涼「最初の御相手には、この僕が相応しい」
伊織「えっ」
昴「伊織さんを困らせるな。俺が行く」
伊織「あの」
玲司「待った」
 玲司の声に、涼と昴も振り向く
涼「……玲司兄さんにそう言われたら、そうせざるを得ないな」
玲司「これは学校主催の交流会だ。よって初回は、伊織君と、上級生の私とで行く」
伊織(玲司さん)
玲司「そして、涼君と昴君とで行く」
涼「ん?」
玲司「二回目に、私と――」
涼「玲司兄さん。僕と昴君とで行く、というのは?」
玲司「交流会だろう。なるべく四人全員が行動するべきだ」
 涼、がっくりと項垂れる
昴「予想はしていたが……」
涼「まあいいさ。最初は玲司兄さん達二人。そして、僕と昴君だ」
昴「俺は嫌だぞ」
涼「まあまあ昴君。交流会だから。ね」
 昴、涼の言いたい事を察する
玲司「では今回はこれにて」

〇都内・高層ビルの出入り口前(夜)
涼「駅まで御一緒してもいいかい。御姫様」
伊織「涼ちゃん――」
 伊織、何か言おうとするが、後ろにリムジンが停まる
 晴美、少しだけ開いた窓から声をかける
晴美「伊織。いいかしら」
伊織「あ、はい。じゃあ涼ちゃん、また来週」
 伊織、晴美に促され、リムジンに乗る

〇リムジンの車内(夜)
 伊織と晴美、リムジンの後部座席で、向かい合って座っている
伊織「面白い見世物に、なりましたか」
晴美「ええ。貴女、あんなに表情が変わるのね。くるくると。とても愛らしかったわ」
 伊織、「そっちか」と顔を赤くする
伊織「交流会、四人とも幼馴染みでは、趣旨からは外れてしまいますか? 私は彼らが来ると知らなかったのですが」
晴美「問題ないわ。殿方との交流であるという事に変わりはないもの。それに、この交流会はまだ第一回目。まだ探り探りの段階なのだし」
 晴美、テーブルの上でノートパソコンを開く
 ディスプレイには、絵里から送られてきた記事の下書きが表示されていた
晴美「貴女が気負わずに済む相手なのでしょう。校長とは話が付いているわ」
伊織(良かった。相手の男子生徒を、知らない誰かに変えますって言われたらどうしようかと……)
伊織(これなら大丈夫。昴君はああ言っていたけど、お茶会をして、お出かけする。今までの私達と変わらない。適当に過ごしていれば)
晴美「上質な記事に仕上げるから、楽しみにして頂戴」
伊織「記事?」
 伊織、初めて聞く単語に素っ頓狂な声を上げた