〇都内・高層ビルの八階にあるカフェの個室(夕方)
昴「――で」
昴、緑茶の注がれたカップを置く
昴「本当に暢気にお茶会なんかしてどうするんだよ!」
玲司「昴君」
昴「んぐ」
昴、玲司に諭され、ぐっと声を詰まらせる
玲司「食べなさい。ほら、昴君の好きな抹茶のロールケーキとモンブランだ」
玲司、皿を昴の前に置く
昴、伊織の方を向く
昴「あーんってして」
伊織「いいよ。はい」
伊織、抹茶のロールケーキをフォークで割って差す
涼、そのフォークを奪い取り、昴の口元に押し込む
涼「はいあーん」
昴「あんたじゃなふが」
昴、もぐもぐと好物を食べ、御満悦な顔になる
涼「あれ。ふふ、御姫様」
伊織「……!」
伊織、身構えるが遅れた
涼、手を伸ばし、伊織の口元を拭う
伊織、顔が真っ赤になる
伊織「ちょっと、玲司さん」
伊織、立ち上がり、玲司の腕を引っ張って立ち上がらせる
玲司「私かい?」
玲司、促されるまま立ち上がり、伊織に引っ張られるまま個室を出る
〇都内・高層ビルの八階にあるカフェの廊下(夕方)
絵里、個室前に張り付いて耳をそばだてていたが、
絵里「はわわっ」
足音を聞いて、慌てて角の向こうに引っ込む
扉が開き、伊織と玲司、逆側の角の向こうに行く
〇都内・高層ビルの八階にあるカフェの廊下(夕方)
伊織「玲司さん、あのね」
玲司「何だい?」
伊織、玲司を壁際に追い詰めつ
端から見ると壁ドンだが、伊織は気づかない
玲司(涼君の事だろうな……)
伊織「今回の交流会、月に一度のお出かけがあるでしょ」
玲司、交流会の内容を思い出す
週に一度の交流会(実態はお茶会)だが、その月の最後の交流会は複数人で外出する〝お出かけ〟もある
伊織「あれに、立候補して欲しいの」
玲司「それは構わないが……」
玲司、涼と昴を思い出す
伊織「ほんと? お願いね。私と二人きりのお出かけなんて、涼ちゃんには鼻で笑われるかもしれないし、昴君は大袈裟になりそうで怖くて」
玲司(昴君にとっては大袈裟ではないからな)
玲司、指先で眼鏡をかけ直す
玲司「伊織君。私は、君と外出する事自体は純粋に楽しみだ。君から頼まれなくても立候補するつもりでいた。だが」
伊織「ん?」
玲司「女性の君からこのような申し出をさせてしまい、男としては不甲斐無い限りだ。申し訳ない」
玲司、学校での反応を思い出す
大袈裟だと笑う同級生、嘲笑う同級生
伊織「んふふ。変わらないね、玲司さんは」
伊織、顔が赤くなる
玲司の手を取って引く
伊織「戻ろ。玲司さんの好きなシフォンケーキ、涼ちゃんに食べられちゃうよ」
〇都内・高層ビルの八階にあるカフェの個室(夕方)
店員、すっかり空になったケーキスタンドや皿を下げ、お代わりの飲み物を注いで、去る
涼「さて。宴もたけなわだけれども」
昴「ただ食って飲んでいただけだろ」
涼「この交流会では、月に四度のお茶会の他に、一度の外出があるだろう。栄えある第一回目の外出には、この僕が相応しい」
伊織「え」
伊織、涼の予想外の言葉に、思わずナプキンを落としてしまった
昴「――で」
昴、緑茶の注がれたカップを置く
昴「本当に暢気にお茶会なんかしてどうするんだよ!」
玲司「昴君」
昴「んぐ」
昴、玲司に諭され、ぐっと声を詰まらせる
玲司「食べなさい。ほら、昴君の好きな抹茶のロールケーキとモンブランだ」
玲司、皿を昴の前に置く
昴、伊織の方を向く
昴「あーんってして」
伊織「いいよ。はい」
伊織、抹茶のロールケーキをフォークで割って差す
涼、そのフォークを奪い取り、昴の口元に押し込む
涼「はいあーん」
昴「あんたじゃなふが」
昴、もぐもぐと好物を食べ、御満悦な顔になる
涼「あれ。ふふ、御姫様」
伊織「……!」
伊織、身構えるが遅れた
涼、手を伸ばし、伊織の口元を拭う
伊織、顔が真っ赤になる
伊織「ちょっと、玲司さん」
伊織、立ち上がり、玲司の腕を引っ張って立ち上がらせる
玲司「私かい?」
玲司、促されるまま立ち上がり、伊織に引っ張られるまま個室を出る
〇都内・高層ビルの八階にあるカフェの廊下(夕方)
絵里、個室前に張り付いて耳をそばだてていたが、
絵里「はわわっ」
足音を聞いて、慌てて角の向こうに引っ込む
扉が開き、伊織と玲司、逆側の角の向こうに行く
〇都内・高層ビルの八階にあるカフェの廊下(夕方)
伊織「玲司さん、あのね」
玲司「何だい?」
伊織、玲司を壁際に追い詰めつ
端から見ると壁ドンだが、伊織は気づかない
玲司(涼君の事だろうな……)
伊織「今回の交流会、月に一度のお出かけがあるでしょ」
玲司、交流会の内容を思い出す
週に一度の交流会(実態はお茶会)だが、その月の最後の交流会は複数人で外出する〝お出かけ〟もある
伊織「あれに、立候補して欲しいの」
玲司「それは構わないが……」
玲司、涼と昴を思い出す
伊織「ほんと? お願いね。私と二人きりのお出かけなんて、涼ちゃんには鼻で笑われるかもしれないし、昴君は大袈裟になりそうで怖くて」
玲司(昴君にとっては大袈裟ではないからな)
玲司、指先で眼鏡をかけ直す
玲司「伊織君。私は、君と外出する事自体は純粋に楽しみだ。君から頼まれなくても立候補するつもりでいた。だが」
伊織「ん?」
玲司「女性の君からこのような申し出をさせてしまい、男としては不甲斐無い限りだ。申し訳ない」
玲司、学校での反応を思い出す
大袈裟だと笑う同級生、嘲笑う同級生
伊織「んふふ。変わらないね、玲司さんは」
伊織、顔が赤くなる
玲司の手を取って引く
伊織「戻ろ。玲司さんの好きなシフォンケーキ、涼ちゃんに食べられちゃうよ」
〇都内・高層ビルの八階にあるカフェの個室(夕方)
店員、すっかり空になったケーキスタンドや皿を下げ、お代わりの飲み物を注いで、去る
涼「さて。宴もたけなわだけれども」
昴「ただ食って飲んでいただけだろ」
涼「この交流会では、月に四度のお茶会の他に、一度の外出があるだろう。栄えある第一回目の外出には、この僕が相応しい」
伊織「え」
伊織、涼の予想外の言葉に、思わずナプキンを落としてしまった
