〇都内・高層ビルの八階にあるカフェの個室(夕方)
伊織、玲司から花束を受け取る
伊織「玲司さん有り難う。すっごく綺麗」
玲司「喜んでもらえて何よりだ」
伊織、さっと来た店員に花束を預ける
涼「御姫様。どうぞこちらに」
涼、椅子を引く
伊織「……ええ」
伊織、涼のエスコートに従い、椅子に座る
昴、その隣にさっと座る
昴「なあ、伊織さん」
伊織「ん? なぁに昴君」
伊織、年下の幼馴染みに、デレッとした表情になる
伊織(昔はあんなにビービー泣いていたのになぁ)
〇(回想)伊織と昴の幼稚園時代
昴「えーん、えーん……ぐすっ」
伊織「どうしたの、昴君」
伊織、ポケットから出したハンカチで、昴の顔面の涙を拭う
昴「涼兄ちゃんが、あそんでくれないよぉ」
伊織「ありゃりゃ。じゃあ、伊織お姉ちゃんとあそぼ」
昴「やああ! ちがうぅ! 涼兄ちゃんがいーい!」
回想終了
〇都内・高層ビルの八階にあるカフェの個室(夕方)
伊織(昴君、昔は涼ちゃんにべったりで……)
昴「この交流会、もう終わらせて、二人でどこかに行かないか」
伊織「……んー?」
伊織、デレッとした表情のまま、首を捻る
昴「だって俺達だぞ。交流会といっても、いつもの駄弁りで終わりだ。だったら、切り上げたっていいだろ」
玲司「昴君」
昴「外に出るのは駄目ってか? このビルの中ならいいだろ。水族館とかプラネタリウムとか、伊織さん好きだろ。一緒に行こう」
涼「この交流会は学校主催のイベントだ。予算も出ている。身勝手な振る舞いは許されない」
昴「あんたこそどうしたんだ、そのキャラは。キメェ」
涼「な――」
伊織「昴君」
昴「何だよ。俺はこんなぬるいやり取りを続ける気は――」
伊織、昴の口元に、コーヒーのサービスで付いたクッキーを押し付ける
伊織「おいしいよ。ほら。あーん」
昴、何か言いたげに眉根を寄せながらも、大人しくもぐもぐと食べる
伊織「お腹が空いてたんだね」
玲司「何か頼もうか。夕食前だが、みんな余裕だろう」
玲司、さっとやってきた店員に注文する
昴「そうじゃな――」
伊織「昴君」
昴、伊織の真剣な眼差しに気圧される
伊織「涼ちゃんの言う通りだよ。ね。ちゃんとしよう」
昴、何か言おうとするも、伊織の眼差しに押され、結局はそっぽを向いた
