〇映画館の中・シアター内(放課後)
 昴と伊織、席に座る
 館内の席は七割が埋まっていて、二人の左右は空いていた
昴「伊織さん、いろいろと変わったんだな」
伊織「そう?」
 伊織、フードとドリンクのトレイをセットしてから、スカートの裾を抑えながら座る
伊織「昴君も背が伸びたよね。私より大きくなった」
 伊織、昴の手を取る
伊織「手もおっきくなったね」
 昴、赤面する
伊織「あ。始まる」
 伊織、昴の手を離す
 照明がふっと暗くなり、映画が始まる

〇映画館のシアター内(放課後)
 アクションシーンが続く
 途中、昴が伊織をちらりと見ると、伊織は映画に見入っていた
 音が大きくなった時に、ポップコーンを食べたり、飲み物を飲んだりしている
 途中、恋愛シーンが始まる
 主人公とヒロインが想いを伝え合い、涙を流している
 周りから、すすり泣く声や嗚咽が聴こえてくる
 昴、途端につまらなさそうな表情になる
昴(アクション映画なんだからアクションしててくれ……伊織さんも、つまらないだろうな)
 ×××
 伊織の家で、DVDを観た後
中学時代の伊織「アクション映画だから期待したのに、何か期待外れだった……」
 ×××
 昴、そっと伊織の方を見る
 伊織、ハンカチを目元に抑え、涙を流していた
昴(感動している!? 伊織さんこういうの好きだっけ!?)

〇映画館の中・エントランスホール(放課後)
 昴と伊織、トレイをカウンターに返却し、出入り口に向かって歩き出す
伊織「凄く良かったね……感動しちゃったよ」
昴「俺はああいうの、あんま分かんないけど……伊織さん、ああいうの好きだったっけ」
伊織「あ。うーん、そうだよね」
 伊織、眉尻を下げて笑う
伊織「環境が変わったからかな。まあ、周りに影響されただけかもしれないけど」
 昴と伊織、映画館を出る