〇カフェ・フルクトゥスの個室(放課後)
伊織「あ、返信が来た。早い。流石は玲司さん」
玲司『その案でいいと思う。場所は昴君と伊織君で決めてくれ。来週の金曜日は、私と涼君がペアだな』
昴「決まりだな。伊織さん、どこに行きたい?」
伊織「昴君は?」
昴「俺は伊織さんの行きたい所を知りたいな。一緒に行きたいんだ。伊織さんの行きたい所に」
伊織「私の行きたい所、か」
 伊織、昴と涼を見る
 涼、小首を傾げる
涼(何で僕を……?)
伊織「じゃあ、学校に行ってみたいな。昴君が通っている所」
昴「やだ」
伊織「即決だね!?」
昴「伊織さんに会いたくてここまで来ているのに、わざわざかったるい所に引き返すのはやだ」
伊織「じゃあ映画館に行こ。昴君の好きなアクション映画、確か始まるよね。来週はゴールデンウィークも明けているし」
昴「……行く。チケット取っとく」
伊織「お願いね」

〇フルクトゥスの個室の廊下(夕方)
 晴美、手元のタブレットで、個室の中のカメラ映像を見ている
晴美「映画館の中までは、流石に立ち寄れないわねえ」
絵里「入場しても、御二方に注目してしまいますもの。映画を観に来た方々にも失礼ですわ」
晴美「その分をどう埋めるか……あら、ちょうどいいわ。もし、そちらの御方」
涼「はい?」
 お手洗いに出てきた涼、見知らない女子生徒に話しかけられてビクッとする
晴美「聖カメリア女学園高等部の者です。伊織の事を、どう思われていて?」
絵里(晴美様、そんな率直に……!)
涼「唯一の女性(ひと)です」
 涼、さらりと答える
絵里「はぇ」
 絵里、赤面する
涼「行っていいですか?」
晴美「ええ」
 涼、会釈して早足に去る
晴美「今回の交流会。一応、三月までの計十二回は続けたいのだけれど、できるかしら」
 晴美、スマホにメッセージを打ちながら呟く