幼馴染み、四重奏。

〇最寄り駅の前(夕方)
女装した涼「あ、いた! お~い!」
 待ち合わせ場所に近づく
 私服姿の昴、涼を見てぎょっとする
昴「おい」
女装した涼「大丈夫よ、大声を出さないで。すぐに着替えてくるから」
 涼、駅の中に入っていく
 私服姿の玲司、伊織に近づく
玲司「今日は宜しく」
伊織「よ、ろし……く……?」
 伊織、玲司の見慣れない格好にドキッとする
伊織(玲司さんだよ? 何で緊張してるの……?)
玲司「では行こうか。今日の内容は――」

〇藤原御苑(夕方)
玲司「藤原御苑で、花見だ」
伊織「わあ――」
 桜の花弁が舞っている
 用意をしていた人達が一礼して立ち去る
 桜の木の下にレジャーシートが敷かれ、重箱や、紙コップや紙皿も用意されていた
玲司「伊織君、お茶でいいか?」
伊織「あ、うん、有り難う」
 伊織、玲司がお茶を注いでくれた紙コップを受け取る
伊織「それじゃ」
涼「かんぱーい!」
 四人分の紙コップがぶつかり合う
伊織「って、何でいるの!?」
 昴、ことりと首を傾げる
昴「仲間外れか?」
伊織「うっ。……いや待って。今日は私と玲司さん、涼ちゃんと昴君のペアで出かけるんでしょ。これじゃ結局、四人行動だよ」
昴「二人組がたまたま近くにいるだけだ。俺も腹が減ったし」
涼「はいお肉~。たくさんお食べ~」
 男性用の私服を着て、化粧も変えた涼、重箱の中身を紙皿によそい、渡していく
 涼も昴も、移動する気配が無い
 伊織、小声で玲司に話しかける
伊織「何か御免。せっかく玲司さんが話をまとめておいてくれたのに」
玲司「構わない。しかし……そうだな。今日の君の相手は私だ。私とだけ、話をするというのはどうかな」
 涼と昴、同時に玲司の方に振り向く
 伊織は何も気づけない
伊織「いい案! 流石は玲司さん。そうだ、ちょうど聞いて欲しい事が――」
 玲司、伊織に手を伸ばす
 伊織、びくっと震える
玲司「花弁が。……伊織君?」
 伊織、小さく震えながら、
伊織「な、何でもない……」
 伊織、か細い声で呟いた