〇(回想)外の公園(涼と伊織の幼稚園時代)
 涼、泣いている伊織を必死に慰めている
涼「だいじょうぶだよ。やくそく。ほら」
伊織「う、うん」
 伊織、泣きじゃくりながら、左手の小指を差し出す
 涼の小指と絡まり、指切りをする
涼「ゆびきり、げんまん」
(回想終了)

〇聖カメリア女学園高等部の校舎・生徒会室(放課後)
伊織「は?」
 松下伊織(高等部二年)、晴美(高等部三年)と絵里(高等部一年)の視線を感じ、慌てて取り繕う
伊織「こほん。失礼しました」
校長「構いません。気持ちは分かります」
 校長、湯呑みのお茶を啜り、一息つく
伊織(分かるんなら、どうしてこんな馬鹿みたいな企画を……)
 伊織、校長から差し出された書類を改めて見る
伊織「他校の男子生徒との交流会、なんて」
顧問「説明しよう!」
伊織「うわ」
 顧問、ホワイトボードに、意見書の紙を貼っていく
顧問「先日のOB会で寄せられた意見だ!
   〝いざ社会に出たら思ったより殿方が多くてびっくりした〟
   〝父親の後を継ぐべく入社したら思ったより男性が多くて困惑した〟
   〝学生の内に、せめて同年齢の男性と交流する機会があれば良かった〟
   というわけで、今回の交流会を企画したのである!」
伊織「なるほど。でも」
 伊織、書類を顧問に突き出す
伊織「第一期交流会のメンバーが、私と、晴美せんぱ」
晴美「伊織?」
 晴美、紅茶が入ったカップをソーサーに置く
伊織「失礼しました。晴美お姉様と、絵里ちゃ」
絵里「あれほど言っているのに、酷いです伊織お姉様……!」
 絵里、顔を両手で覆って、わっと泣き出す
伊織「……絵里の三人なのは、少ないと思います。校内で、出席したい生徒を呼びかければ」
晴美「きっと来ないわ」
絵里「来ないかと」
顧問「うちの生徒はねえ」
校長「次の交流会では、そのようにします」
伊織「そんな最初から諦めなくても」
校長「そのために、貴女達、生徒会の三人に参加してもらうのです」
 校長、立ち上がる
校長「頼みましたよ」